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『さくさく堂のテープ起こし業務日誌』 バックナンバー 6


        === さくさく堂のテープ起こし業務日誌  第51号 2005/1/31)===


         1月中にやっておかなきゃいけないことがあるんですよ。
         恒例 ことしの抱負、の続き(笑)。


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         テープ起こしの工程を三つに分けます。

          [1]  粗起こし
          [2]  聞き直し(用字・用語調べ)
          [3]  整文

         まず初心者は、[1]を習得するのに非常に苦労します。
         初めて起こすと1時間テープで10時間以上かかってしまう。

         それが速くなってくると、4時間、3時間、強者は2時間で起こしてしまい
        ます。単純にそこだけで単価計算すると5倍も違いますね。だから、「1時間
        テープを何時間で起こせますか」という質問は、テープ起こし業界では絶対に
        廃れることのない流行りの質問です。

         さてさて、12月から1月にかけて、[2]にとても時間がかかる仕事をしまし
        た。要するに、内容が難しいんです。「難しい」というのも主観的ですね。は
        い、そうです。私にとってムズカシかったわけです。要は苦手分野ということ
        ですね。
         大抵のテープ起こしというのは、そんなに知識は求められていません。クラ
        イアントはこちらが専門家じゃないことをご存じです。「専門用語は片仮名で
        結構です」という依頼は多いです。
         線引きは「ネットで調べられるかどうか」だと思っています。ネットで調べ
        られることはわかって当然。当然って言っても、これが結構難しいんだけどね。

         しかーし残念ながら、12月のご依頼はそうではなかった。もちろんこちらが
        専門家じゃないことは百も承知。それでもそれなりのレベルを求められた仕事
        でした。


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         そういえば、11月にそのお仕事関係の研究会を傍聴させていただきました。
         彼らがどんな気持ちで録音したのか、インタビューにどう臨んだか、それが
        今の研究者にとってどれだけの価値があるのかというお話が聞けて、すごい仕
        事に携われるもんだと、正直気後れしましたよ。
         その席上で、「いろいろ大変だが、実際のテープ起こしもまた大変だ」てな
        話に一瞬なったんですね。そのときのよどんだ空気ったら! 言葉を発しなく
        ても、皆さんがテープ起こしをお嫌いなのがよぉーーっくわかりました。そん
        なに研究者に嫌がられる仕事を請け負っているあたしたちって……。


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         幸運なことにグループワークだったので、一緒に原稿チェックしてくれた仲
        間がいて、なんとか納品まで漕ぎ着けましたが、まずネットで調べ、図書館に
        通い、本屋に通い、古本も買い(これはネット通販。今は遠方の古書店に行か
        なくていいから便利よね)、もちろんパラパラッと読むんじゃなくて全体を読
        み、自分の原稿を作りながらメンバーの原稿もチェックするという作業を何回
        もし、果てしない、果てしなーい作業を続けました。

         にわか勉強で素人から脱出できるわけでもなく、虫食い的にわかったような
        レベルにしかならなかったわけで、今更ながら、

            内容がわからない話は文章にできない

        という事実を強烈に突き付けらました。それでも、一つの原稿に突き詰めて取
        り組む経験というのは貴重で楽しかった。

         そりゃあね、内容が難しいテープというのは、今までに何回も経験はありま
        すが、数日で仕上げていく仕事の場合、勉強する時間的な余裕がありません。
        「グログリン」と聞こえたものが「ブロブリン」だということはネット検索で
        見つけるところまではやるけど、じゃその「ブロブリン」はどんなもので、ど
        ういうときに使うかというところまでは追究できないで終わっちゃうわけです。

         それはクライアントが、テープ起こしをする人間は知識豊富で、ブロブリン
        の予備知識なんか知っていて当然と思っているか、別にブロブリンなんか知ら
        なくたってだいたい起こしてくれりゃいいんだと思っているかのどちらかです。
        うひょー、背筋の寒くなる話ですね。

         こんなふうに[1]より[2]のボリュームが多い仕事は初めてでした。こ
        れをテープ起こしと言うなら、今まで私がやってきたテープ起こしとは全然別
        の種類の仕事だと思った。

         ふと思い出してみると、最初に「テープ起こしっていいじゃない」と思った
        きっかけの一つに、「知らない話を聞ける」というのがありましたね。
         でもね、何年かやってだんだんすれてくると、「おー、『ブロブリン』、確
        定! やったー」で満足することが増えてくるんですね。そうなの、私ったら
        「知らない話が聞ける」喜びを忘れてしまっていたかもしれない。

         今年は少し初心に戻って、テープに対する好奇心をもう少し強くしようと思
        っています。せっかく聞くことができたテープなんだから、もっと内容がわか
        ったら面白いじゃありませんか。

            テープそのものを楽しもう。

        これで行きます。行きますったら。行けるといいなあ。

       


        === さくさく堂のテープ起こし業務日誌  第52号 2005/2/9)===


         前回、ことしの抱負を書かせていただいたばかりですが、「さくさく堂のテ
        ープ起こし業務日誌」は媒体をブログに移行することにいたしました。

        http://plaza.rakuten.co.jp/saku2do/


         メルマガを完全に休刊してしまうのか、若干不定期にはなっても発行し続け
        ていくか、ブログの出来具合によるので、今の時点ではまだ決められません。
        かなり悩んでおります。どれだけ書けるかもわからないし、どの程度皆様から
        の反応があるかというのもわかりません。

         ブログの話題の中で、トピックとして抽出できるものを再構築して、メルマ
        ガで発行していくという形も考えていますが、できるかどうか自信はありませ
        ん。なんて弱気なんでしょ。


         ブログのよいところは、メルマガより周辺の話題が書けること。自分の中で
        やや未解決な状態でも書けること。コメント機能があるので、皆様からダイレ
        クトにご意見・ご感想をいただけること。またそれにダイレクトにお答えでき
        ること。あとHTMLが使えること。

         メルマガのよいところはは、ネタとして熟成してからネットに乗せること。
        実はこのちゃんとオチまで考えることを私はとても大事にしていて、だからこ
        そブログはやりたくないとかたくなに思っていたんですが……。

         しかし考えてみたら、「日誌」などと銘打っておきながら、発行周期は月誌
        みたいでタイトル詐称だったのが、ちゃんと日誌に近くなるんですねえ。さす
        がに毎日は書けないと思いますが。


         ブログに移行する理由についてはいろいろとあるのですが、それにしても熟
        考せずに動いてしまいました。なんてったって、51号を発行した時点では微塵
        もそんなこと考えていなかったんですよ。こんなふうに衝動的に動くのは最近
        少なくなっていたので、珍しい自分のこの勢いを信じて、ちょっとやってみよ
        うかと思います。

           今までメルマガをお読みいただき、どうもありがとうございました。

               そしてこれからもよろしくお願いします。

       


 

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